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落ち着いてやれ俺。一発で倒そうなんて甘い考えは捨てろ。今はとにかく、少しでもダメージを与えることだけを考えるんだ。じわじわと減らして削っていけば、必ず光明は見えてくる。必ずだ。
右手に宿る焔星は、裏鏡の身体の中心を捉えていた。肝心の裏鏡は避けようとも防御しようともしない。無表情で冷たい視線を向けながら、ただただその冷たい灰色の瞳で見つめてくるのみ。
まあそりゃそうだろう。どうせ全部吸収か反射で凌ぐんだから、回避も防御も必要ない。
でも今回ばかりは、それが逃れようのない隙になる。
焔星へさらに霊力を供給し、さらに圧縮していく。それは親父にブチこんだときの比じゃない。あのときよりも数十倍以上の力を込めた。霊力が身体から一気になくなる感覚と同時に、身体の奥底からだばだばと湧いてくる感覚が錯綜する。
数を撃つより、一発の威力を極限まで高める。どうせ煉旺焔星は連射に向かない。ならば一撃一撃、俺の全てを右手に宿す。
「消えてなくなれ!!」
焔星が裏鏡に触れた瞬間、視界が全て真っ白に掻き消され、何もかもが爆発四散し文字通り消えてなくなる―――と思ってた矢先。
焔星は膨れ上がることなく、一気に縮んで消えてなくなってしまったのだ。
目を見開き、状況を一生懸命把握しようと五感を研ぎ澄ませる。同時に脳味噌もこねくり回すが、それでも現実が全ての先を行ってる状況に、背中がどんどん冷たくなっていく。
「ご……ば…………ぇ……!?」
突然身体中に激痛が走った。視界が回転する。
辛うじて聴覚が音を拾うが、色んな音が大音量で入り混じっててワケワカンねぇ状態だ。
木々を薙ぎ倒してるような音も聞こえる。でも庭に生えてる木には攻撃してないし、というか二人ともかなり開けた場所にいたはずなのに、なんで木が倒れるんだ。
やっぱりさっきの煉旺焔星のせいか。不発だったわけじゃなくてきちんと効果を発揮してたのか。だとすれば納得がいく。やっぱり俺の攻撃は奴に効いて―――。
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