白銀の暴威

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 クソが、もう考えてる暇なんかねぇ。アイツが何の手品使ってるか知らんが、奴の手を暴くよりとにかく攻撃しねぇと。さっきから一方的にサンドバッグにされてやがる。  俺は喧嘩してるのであってサンドバッグになりにきたワケじゃない。一体どんな手を使ってんのか知らねぇが、だったらさっきよりも強い攻撃でテメェを沈めればいい、ただそれだけの―――。 「遅い」  こと、と言おうとした、その瞬間だった。起き上がろうとした矢先、何かに顔面を連続で殴られる。  顔の至る所から熱い血が流れ出るのを辛うじて感じる。ただでさえ意識が昏倒してるってときに、顔面への連撃は正直つらい。痛いというより、もはや気持ち悪さの方が強く出てくる。  またクソ間抜けにすっ飛ばされた。木々が倒れるのを辛うじて耳が感じ取り、いま自分がどんな態勢なのかを腕、手、足など身体の全部を使って懸命に把握する。  脳が揺れてるせいか視力が落ちてて完全に眼が使い物にならない。他の四感覚でなんとか状況を把握するしかないが、それも中々覚束ない。 「早く竜人化したらどうだ」  どこからともなく聞こえる裏鏡(りきょう)の声。耳と、肌で感じる霊圧で大まかな位置と強さを感じとれる。  言われなくてもなるつもりだが、テメェがそれすらさせてくれねぇからだろうがよ。舐めやがって、それ言うなら少しは勘定しろや。  心臓をイメージし、それを中心に全力で力んだ。胸から全身へ、赤黒い鱗が夥しく肌色を染めていく。さっきの倍以上の霊力が全身から吹き出し、周りにあった瓦礫や木々、草花を一瞬で蹴散らしていく。 「次はこっちのターンだ!!」  全ての霊力を両脚に集中させ、地面をぶっ壊す思いで蹴る。どごん、と地面がぶっ壊れる音が鳴り響くと同時、一瞬で裏鏡(りきょう)の間合いに抉りこんだ。  もうコイツ相手に出し惜しみしてらんねぇ。少しでも力を緩めたらその時点で隙になる。  テメェが隙を与えねぇってんならこっちだって同じだ。身体の奥底から無限に湧き出す霊力を使えるだけ使ってブチのめす。
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