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◇◇◇
救急処置がほどこされ、何とか命はとりとめたものの、瑞妃の細い腕や足は赤紫色に変わり、顔からも生気が失われていた。宗助は、電動リクライニングベッドで上半身を起こし横たわっている瑞妃の枕元に立つ。
「俺さあ、絶対に瑞妃と満開の桜を観に行きたいんだ。だからさ……」
「……どうせまた私に手術しろっていうんでしょ……」
瑞妃は、小さな声でそう言うと、顔をゆっくりと宗助から背けた。
「ああ。手術してほしいんだ。元気になって、たくさん楽しいことやワクワクすることを経験してほしい。胸に傷は残るかもしれんけど、きっと素敵な彼氏にも巡り会えると俺は思ってる。……って、命を張っていない俺が言っても、説得力ないけど……。でもな、瑞妃の未来は、瑞妃の力で切り開いていくしかないんだで」
…………
「うそつきにそう言われると、ますます希望がなくなってきちゃうがね……」
瑞妃にそう言われ、宗助は、何と言葉を返していいかわからない。
すると、横から母が割って入った。
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