うそつきホームラン

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 「甲子園に出てな、凄い野球選手がいっぱいおることが分かったんや。次世代のプロ野球は、そいつらにまかせておけばいい。でな、俺は医者になる」  それを聞いた母が、思わずプッと吹き出した。  「何、言うとんの。あんたにとってはプロ野球選手よりも難しい進路だがね。そもそも宗助って勉強嫌いやっただろ? そんなことできるんかね~~」  母は、バックミラー越しに訝しそうに宗助を見た。  「医者って命を守る仕事やろ。俺、命、守りたい。だからな、瑞妃のがんばりに負けんように一生懸命やるわ。それでもだめやったら、ほかの仕事でもええから、人が生きるのを助ける仕事をしたい」  「あたしは、宗ちゃんを応援するわよ。宗ちゃんならきっとできると思っとる」  「瑞妃。ありがとな。瑞妃も、中学校の勉強がんばれよ」  「あれ? やっぱり兄ちゃんうそつき!」  「ありゃ。『うそつき』が再発したわ。何で?」  「だって宗ちゃん、元気になったら、たくさん楽しいことやワクワクすることを経験しろって言ってたじゃんか。彼氏も作ってほしいって……」  「そうだったな。……分かった、瑞妃。入学したら思いっきり遊べ! 彼氏も五人くらいつくれ!」  「二人ともなに言っとんの?」  宗助は、母はあきれ顔をすると思ったが、あきれ顔はせず、反対に思いっきり笑い出した。宗助と瑞妃も思い切り笑った。  明後日は、瑞妃の入学式。桜のトンネルを抜けると、空が広がっていた。希望に満ちた輝くような青空だった……  — 了 —
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