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母の言葉を聞いて、ギクリとした。
瑞妃は、中学卒業まで生きられないかもしれない。瑞妃は、何一つ楽しいことを経験しないまま死んでしまうかもしれない。そう思うと、宗助の胸は潰れてしまいそうに痛んだ。
同時に、お転婆だが、辛いときには何度か弱音を吐いていた妹のことを愛おしく思った。
何とかしてやりたいが、瑞妃の気持ちを変えることは容易ではない。
宗助は悩んだ末、母に「分かった。話してみるよ」と答えた。
自分の部屋に戻ると、どうやって瑞妃を説得しようかと考えた。しかし、そう簡単に良い方法が見つかるはずもない。
…………
冬のある日、宗助は、たまたま居間で瑞妃と二人になったタイミングで、「瑞妃。お前、手術受けてみん?」と訊いた。すると瑞妃は、「いや。絶対に手術は受けん。めっちゃ大きな傷が体に残るもん。そんなんで彼氏ができてもデートなんかできんやろ」と言われた。
宗助は、「けど、彼氏がどうこうより、瑞妃が元気でいることの方が大事や」と言い返したが、瑞妃は、「うそつき兄ちゃんの言うことなんか聞いてられんわ」と怒鳴られ、それきり口もきいてくれなくなった。
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