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「宗ちゃんがね、春の選抜高校野球で甲子園に行くことになったんよ。宗ちゃんはね、甲子園でお前のために、でっかいホームランを打つって言ってる。うそかもしれんけど、もしホームランを打てたら、あんたも頑張ってくれんかなあ」
ほんの少しだけ、空気が止まる。瑞妃の顔がわずかに強張った。
「……何言っとんの、母さんもうそつきになった? 兄ちゃんは、決勝でホームラン打てんくて負けたんだで。優勝もしてないのに、どうしてそんなもんに出れる?……」
「決勝で負けても、出れるんや。二十一世紀枠っていうのがあってな、宗ちゃんたちのチームが運よくそれに選ばれたんだで」
母は、そういうと、新聞の記事を見せた。瑞妃はそれを見ると、黙ったままリクライニングの電動ボタンを押した。そして、ベッドを倒し、宗助に尻を向けると、ふて腐るように寝てしまった。
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