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「あー!本当馬鹿だな!お前は!」
何でこんな事を俺がごちゃごちゃ考えなきゃなんねーんだよ!
苛々しながら頭を掻いて俺が言うと、「は?」と平野は俺を睨みつける。
俺はその顔を眉を顰めながら見て、カップをテーブルにタンっと置く。
「だってそうだろう?お前、何年ボスに片想いしてんだよ?後悔するくらいなら振られてもいいから好きだっつーくらい言えば良かっただろうが!」
俺が吐き捨てる様に言うと、赤い顔がより朱に染まっていく。
「何で……分かった?」
目を見張って平野は呆然と呟く。
やっぱりコイツは分かってねーな
俺ははぁっと深く息を吐き出してから続けた。
「俺だって、お前の事何年見続けたと思ってんだよ。お前がボスの事どう思ってるかなんて、こっちはすぐ気づいたっつーの!」
思いの丈を平野にぶつけると、訳が分からないと言った顔でまだ俺を見ていた。
「どんだけ鈍感だ。お前」
俺はすぐ手の届く範囲だった平野の顔を両手で包み込むと、そのまま唇を押し付ける。
アルコールの熱とさっきまで吸っていた煙草の苦味を感じながら、唇の隙間から舌を差し入れる。
突き飛ばされるのを覚悟していたが、そこはアルコールのなせる技なのか平野は素直に俺に応えだす。
「んっ……ぁ……」
酒臭いだろう吐息が平野から漏れるが、俺も同じだろうから気にならない。それより、より熱を帯びて熱くなる唇を、舌を、俺は夢中になって貪る。
「んんっ……は……せ……」
俺だって3年。そう3年もの間、こいつを目で追い続けた。
きっかけが何か覚えちゃいねーが、ずっと好きだった。今まで自分の中にしかなかった妄想が現実になってんだから、止められる気なんてしない。
「ん?何だ?」
唇を離して、そのままフローリングの硬い床に平野を押し倒すと、そのまま平野の上に覆い被さり顔を近づけ尋ねる。
「ちょっっ……!おいっ!」
ようやく我に返ったのか、平野が俺の下で身を捩る。
仕方なく一旦動きを止めて平野の顔を見下ろした。
「なんだよ?いいところだろーが」
悪びれず俺が言うと、平野は「はぁ?」と呆れたようにいう。
「お前、いつから俺のこと……」
「お前がボス想ってたのと同じくらい、俺はお前の事好きだったよ」
みるみる照れたように平野の瞳が揺らぎだす。
「お前こそ馬鹿じゃねぇの⁈こっちは全く気づかなかったっつぅの!」
「俺、隠すの上手いだろ?」
自慢げに言うと、平野は俺の体の下ではぁっと大きく息を吐く。
「ほんと。参ったよ……」
そう言いながら平野は熱い瞳をこちらに向ける。
俺はそれに誘われるように、また唇を重ねた。
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