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あいつと俺
本当に酒って怖い。
理性なんてものをあっという間に吹き飛ばし、本能剥き出しで俺は長谷に応えていた。
唇の隙間を割られてねっとりと絡みつく長谷の舌。火傷しそうな程熱く俺の口の中で蠢いて唾液を混ぜている。
「ふっ……ぅっっ」
息もさせてくれないくらいに塞がれっぱなしで、ほんの少しの隙間から必死で空気を吸う。
苦しいのか、気持ちいいのかわからねぇけど、とにかくしがみつく場所が欲しくて、長谷の着ているざっくりしたニットの腕を掴んだ。
ほんと、何やってんだか
熱くなって行く体とは反対に妙に冷静に思う。
ボスに失恋したから?それとも、思いもしない告白をされたから?
けれど、結局俺は嫌じゃないからこんな風に流されているのだ。
執拗にキスされて、それだけでもう体がドロドロに溶かされそうになっている。
長谷は時々唇を離すと、俺の耳元で「すっげーかわいい」なんて囁く。
その言葉に、長谷が俺のことを本当に好きだったんだと実感した。
「おい。このままここでやんのか?」
リビングの硬い床の上。正直背中が痛い。そのまま俺のスエットに手を滑り込ませている長谷に俺は尋ねる。
「んー……」
と言いながら長谷は体を起こして、いきなりセーターを脱ぐとバサッとそばのソファにそれを放り投げる。
「だって、シーツ汚したら寝られねーじゃん?」
悪びれる様子もなくそう言う長谷は、何か思いついたように立ち上がった。
「ちょっと待ってろよ。服、脱いどいてくれてていいぞ?」
なんて言いながら長谷は消えて行く。
「脱ぐか!」
そう答えながら起き上がり、俺は頭を抱えた。
て言うか、マジか?
俺は、長谷が俺の事好きっつう以前に、ゲイだとも知らなかった。いや、もしかしたら両方いけるとか?
そんな事、今はどうでもいいか。
長谷と同僚になって3年。経緯は違うが同じ時期にスタッフになって、もちろん仕事の話は今まで沢山してきたし、2人で飲む事だってあった。
けど、カケラもこんな雰囲気になったことなんて無かった。なのに、何で今更……こんな事になってんだ。
はぁ〜と大きく息を吐き出して、俺は自分の頭をガシガシ搔く。
「待たせたな」
薄暗い部屋に戻って来た長谷は何かを抱えている。
「ほら、これならマシだろ?」
そう言いながら俺の後ろに回ると、その畳まれた毛布をひいた。
「な、なあ。本気か?その……最後までやるつもり?」
すでに俺の前に座り込むと、長谷は俺のスエットに手をかけて脱がせようとしている。
「お前が絶対嫌っつーならしねーけど、ちょっとでもいいならやりたい」
長谷はそう言いながら笑った。
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