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誇示
必定。
あ、この字上手に書けた、と思ったときに限って、誤字だったりするものだ。
誤字したのが悪いのか、ぬか喜びしたのが悪いのか。
脳は相反する。つまり私は相反する。
人という漢字は、人と人とが支え合ってできていると聞くが、では人は、一人では存在できないのか? 詭弁だけれど、そう問いただしたくなる。
だって、今日はこんなにも寒いから。
あ、もっと遊んでいたいな、と思ったときに限って、五時のチャイムが鳴ったものだ。
そう思えた友人がいたこと。心配してくれる家族がいたこと。
他者は一貫する。他者は矛盾しない。相対的に正しい。
相対的に、私は正しくない。
人という漢字は、人と人とが支え合ってできていると聞くが、では人は、一人で絶対的に正しくあることはできないのか? 私は正しくありたい。そう叫び出したくなる。
だって、今日はこんなにも寒いから。
だって、今日はこんなにも寂しいから。
一人でいれば人恋しい。複数人でいれば煩わしい。
私は相反する。私の心は相反する。
私が二人いればいいのに、と考える。
そうすれば、寂しくもなければ煩わしくもないのではないだろうか。
畢竟――
一もなく二もなく三もなく、ただ気体のようなものとして存在していたい。
一足す一は二。二足す二は四。私足す私は私。
足りない私を私で補って、この世に対する占有体積を増やしていきたい。
私と他者との境界はなく、私は他者であり、他者は私である。
つまり、この世に存在するのは私のみである。
宙に浮遊する私は正しい。
言葉を述べる私は正しい。
この文章を書く私は正しい。
私は正しくないと思う私すら正しい。
この世には私が充満していて、私は寂しくないだろう。私は寒くないだろう。
私が望むように、絶対的に私が正しいだろう。
では、誰がそれを認めてくれる?
では、誰がそれを褒めてくれる?
私が私を認めても、それは単なる主観でしかなく、客観的根拠に乏しい。
私が私を褒めても、それは単なる自惚れでしかなく、単なる傲慢でしかない。
――嫌いだ。
あ、「自」を上手に書けたと思ったのに誤字だった。
私は「目」と書きたかったんだ。
間違って点を足しただけで、「目」は勝手に「自」になる。
くすくす、くすくす。
まるで「目」にごみが入った状態が「自」ではないか、と。
結局の所、私ごときの存在は、この世を最も認識する「目」とそれに付随するごみのような点をもってして成り立っているにすぎないのではないか――
つまり、私のほとんどはごみである、と。
くすくす、くすくす。
私は私が大好きだ。
まさに自惚れ。一目惚れ。
褒めろ。崇めろ。敬え。媚び諂え。
だって、ほら、ごみにしては頑張っているじゃないか。
畢竟、私は嫌いだ。
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