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肩の緊張
吐き気を催す季節。
きみのいる季節。
金切り声と、布団が身を噛む朝。
始まりは絆し。終わりは解れ。
海月の空に映ったものが、月と呼ばれるものと知れ。
袖を通して冷気を浴びて、空の落ちた先を帯に結ぶ。
きみはいずこ。私はここ。
なーんちゃって。
そんなこと、思ったことないから。
まったく、素直じゃないんだから……。
そんなの、お互い様でしょ?
始まる先に終わりがあって、終わる先に傘を差す。
なぜ? なぜきみは、そんなに平静でいられるの?
歯痒さに衣着せて、軋んだ音の響くままに。
特段言うべきこともなければ、特段呑み込むこともない。
時雨が止んだら帰るよ。
目が靄いだら俯く前に走れ。
腰に差すは、抜身の赤い山茶花。
恥ずかしい……。
そういうのやめてって、いつも言ってるよね?
逆さで瞬くこっちの身にもなってよ……。
とはいえきみは、鈍く美しく、果てしない。
悔しい……。
そう思ったが最後、私はきみに届かない。
なべて、すべてのきみは勝鬨に猛らず、雨に濡れず、私を見返ることもなし。
どうしよう……。
そう思ったが、時すでに遅し。
きみは傘を差し、雨粒は月に向かって光を放つ。
蒼穹に果てがあるように、海原に果てがあるように、見ても見果てぬきみの果てを見る
――あ。
きみはいつも、隣にいたのか。
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