あなたを守れたら

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 しかし何よりも不気味な事は、周りにある階段がありえない方向に  交差したり、開けっぱなしの公園の蛇口から流れ出る水が  下から上に重力に逆らって流れていたりすることだ。  まるでエッシャーの騙し絵を見てるような気分になる。  「…まるで意味が分からない」  いきなり殺されたかと思うと、  今度はこんなワケの分からない場所に飛ばされて。  混乱しないほうがおかしい。  一体何が起こってるんだろう。  あの痛み、あの感覚、これは果たして本当に夢なのだろうか。  「………少し歩いてみようかな。」  とりあえず歩いてみよう。  ココが瑠璃の言っていた『いろんな場所』の一つなら、  他の場所への入り口となるものがあるハズだ。  入り口を探してさっさとこの奇妙な場所から抜け出したい。  「……進まなきゃ」  死にぞこないの体を引きずって歩き出す。  歪んだ街を横目に私は少し考える。  何故こんな夢を見ているのか。  夢にはいくつか役割があると前に本で読んだことがある。  感情の調整、ショックの軽減、警告、願望の充足などなど。  この夢は一体何のために見ているのか。  何を意味しているのか。  「……まぁいっか」  考えた挙げ句どうでも良くなってきた。  本当にこれが夢ならば、きっと覚めた時に全部忘れてしまうだろう。  なら、いくら考えたって、答えを探したって仕方ないんじゃないか。  ポツ ポツ ポタタタタ  顔に冷たい水滴が当たる。  「雨だ」  雲ひとつない夕暮れ時の空に突然降り出した雨は、  次第にその激しさを増した。  「雨宿り…どこかないかな」  小走りで近くの廃墟の屋根の下に逃げ込む。  少しサビが目立つが、問題は無いだろう。      
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