自認

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 俺は高校時代まで、いわゆる「陰キャ」というやつで、クラスで幅をきかせているヤツらに対して劣等感を抱いていたし、友達も暗くて陰気なヤツらばかりだった。  それが嫌だったから、大学生になったら絶対に変わってやろうと思っていた。  縁もゆかりもない土地の大学に合格が決まってから真っ先にしたことといえば、髪の毛を茶色に染めることだった。  そして眼科に行ってコンタクトを作った。  スマホで「大学生 私服 メンズ」と調べ、「モテる」だの「おしゃれ」だの書いてある写真を片っ端からスクショした。スマホ片手に郊外のショッピングモールを歩き、似たような服を探して買った。  両親には頼みたくなかったから、二人が仕事に行っている平日の午前中、近所に住む一個上の先輩に車を出してもらった。昼前に家に戻り、新品の服を引越用の段ボールに詰め込んだ。今まで着ていた服は、今後帰省した時のために何着かタンスに残したものの、それ以外は全部捨てた。  勉強と部活ばかりで、お小遣いもお年玉もほとんど使わなかったから、金はあったのだ。  話し方も変えた。喉で話していたのを、腹から声を出すようにした。合格発表から入学式までの間、毎日鏡の前で口を大きく開けながら発声練習をした。笑顔の練習もした。背筋を伸ばして歩くようにした。
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