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「おはようございまーす」
言われるままに付いていくと、ミラーボールがキラキラしている店内に招き入れられた。綺麗で快活としている人たちが多い国に紛れ込んだアリスのようだった。
「アイナさん、その子はどなたですかー」
「ヘッドハンティングしてきたのよ。あなた達がよく散らかすから」
呆気にとられている僕に向かって、アイナさんはこう耳打ちした。
「最初は掃除してもらうけど、きっとあなたは磨けば光るわ」
その言葉が今でも心に刻まれている。
「一応、履歴書用意してもらって、面接しましょ。希望とかあれば聞くわ」
口角を上げながら片目を瞑ってみせる。瞳から小さな星たちが溢れてくるようで、一つ残らず拾い集めたい衝動に駆られた。
ショーのリハーサルを始めた店内は、色とりどりのライトで満たされた。薄暗い中に突き抜けていく光。アンニュイな心に感じる様々な痛みのようで、しっくりきた、と言えば表現できるであろうか。
「すごく綺麗」
鼻がつーんとなったと思えば、勝手に頬を涙が伝っていた。
「私が手塩にかけて愛でているバーレスクだもの。当たり前よ」
肩に手を置かれても嫌な気がしなかった。大きめの骨ばった手が、僕と似ていて好きだと思った。
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