符号

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「源氏名はどうしようかしら」 「源氏名とは」 僕はセクシーな大人の世界には全く無知であった。あの老夫婦が知っている世界が僕の全てであったからだ。 「あら、何にも知らないのね!新宿に来たのは今日が初めてかしら」 アイナさんの目線からして、履歴書の年齢を訝しげに見つめているようだった。 「拾ってしまった子猫ちゃんは責任持って育てないとね」 曇った顔も晴れやかになり、あなたのここでの呼び名よ、と微笑んだ。 「彰人じゃダメですか」 「うちのキャストは人気が出る子もいるから、なるべく個人情報保護のためにも本名は避けた方が良いと思うわ」 僕がここで働けるような年齢でないことはお見通しであった。 「パーソナルなことは聞いても良いかしら。お店で配慮しなくてはいけないことだけだけど」 「はい」 僕は自分のことを何も分かっていなかった。学校で異質な存在だとは認識していたけれど、人の目から見た時に、どこに属しているかなんて考えもしなかった。 「あなた自身はあなたのこと、女の子だと思ってるの。それとも男の子だと思ってるの」
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