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「アキちゃん!ごめんね」
ショータイム前の先輩が煌びやかな衣装の上からデニムジャケットを羽織って、高いヒールで器用にこちらへ駆けてきた。
「いつもの花屋さん、新人さんが届けてくれるらしくて、道に迷って困ってるんだって!ちょっと表まで見つけに行ってあげてくれる?」
快く返事はしたものの、僕も先輩と同じような格好をしている。
スパンコールが散りばめられたキャップ、ゴールドラメがキラキラとしているオフショルダーとショートパンツのセットアップ。オーバーサイズのデニムジャケットにスタッズがゴツゴツとしているウェッジソールブーツ。
一目見ただけでこの店の者だと分かる。
我ながらよく似合っていると思う。無防備に投げ出された脚も、先輩たちからもらったボディクリームで艶めいている。
不思議と根が華やかでない自分が、まるで映画の登場人物になったようで、心が踊ってしまう。
「うわ、寒い」
店の外に出た途端に刺すような冷たさに襲われた。仕方がない。こんなに露出をしているんだから。
「えー!可愛い子ねー!」
遠くから泥酔しているであろう野太い声が聞こえてきた。
「オンナかしら?オカマかしらー!?立派なものがついてるなら、あたしのとこいらっしゃいよー」
今更だけれど、その言葉で、結局はどこかのカテゴリーに存在しないといけないことに気付かされた。
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