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映画部をつくろう!
「藤村ー。映画部作ろうぜ映画部!」
磯野、野球しようぜ! みたいなノリで、芹沢が話を持ってくる。
「何でまた映画部なんだよ」
「分からないのかよ藤村。お前の占い、当たり過ぎるんだよ」
僕が手品の余興で始めたトランプ占い。これがまた当たる当たる。
最初は抜き打ち小テストの実施と、その範囲を当てたことから始まった。そのうち恋占いみたいなことまで始めてしまって、終いには、いま話しかけてきている、芹沢と、隣のクラスの相澤愛ちゃんを、くっつけるまでになってしまった。
「俺の前にも、ひとりお前のアドバイスで、告白して上手くいったカップルがいただろう」
「それが何なんだよ」
「あれ以来、お前がトランプ広げて話しを始めると、みんな別のことやっていても、クラス全員の耳がこんなになっちゃってるんだよ」
芹沢が、耳に手を広げて、めっちゃ聞いてます! のジェスチャーをするのに、僕も思わず吹き出してしまう。
「で、映画部。あそこ廃部になってるんじゃなかったか?」
「だからいいんだろう。クラスの中でお前が占いを始めたら、ごめんちょっと離れてねー、って、こっちは交通整理が大変なんだからな!」
「や……それは確かに迷惑かけているな」
「そういう訳で映画部だ。前に顧問をやっていた先生に話をしたら、すごい喜んでいたぞ。結構ちゃんとした機材まで揃っているらしいんだよ。それが活用されるのは、すごく嬉しいって」
「マジで映画を作るのかよ……」
「年に1本は、ごく短いのでいいから作品を作って欲しいって。まぁ、今の時代、スマホが一台あったら、楽勝だろう!」
「ちゃんとした機材が泣いてるよ……」
とは言うものの、部活として、僕と芹沢だけで成立するものなのだろうか。今の話だと、顧問の先生は何とかなりそうな雰囲気だが。
「部員は4人必要だそうだ。俺だろう、藤村だろう、アイちゃん……あ、相澤さんな、俺の彼女の」
「アイちゃんって呼んでいるのか。いいなあ」
「アイちゃんはいいぞ! めちゃくちゃ可愛い! それは置いておいて、さて、あともう一人」
「どうすんの?」
「占ってよ」
「その願いは、僕の占いの力を超えているなぁ」
「いや占うんだよ。もう何人も、次の占いの申し込みが俺のところに来ているんだよ。占った後に、映画部に入りませんか、って勧誘するんだよ」
「キャッチセールスみたいだな。出来るのかな、そんなこと」
「出来るか出来ないかじゃない! やるんだよ!」
「うるさいよ。それよりか芹沢、お前は大丈夫なのかよ、剣道部」
小・中・高校と同じ学校だった芹沢、確かこいつは、小さな頃から剣道をやっていたはずだ。
「もう2年にもなるかなぁ……ここを痛めてしまってなぁ……」
「右膝? 痛めてたのか。知らなかった」
「いや痛めたのは左のアキレス腱」
「紛らわしいから全然違う場所をさするの止めてくれない?」
そういう訳で、映画部作成というミッションが、僕に課せられた。達成条件は、だいたいあと一人くらいの部員確保だ。
(続く・スター特典あります)
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