部長だれにしようか、占い

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部長だれにしようか、占い

 映画部(仮)部室。4人が一枚の書類を見つめている。  顧問の先生の名前が書いてあって、映画部を立ち上げたいので申請をどうたら、と文言のある、校長宛の書類。  空白なのは映画部部長の欄。  人数は揃ったけど、誰が部長をやるのか、まったく微妙な雰囲気。 :部員紹介  ・人当たりの良さと顔の広さと行動力は随一! 芹沢武勝(1年)  ・基本影が薄いけどここのところ占いで絶好調! 藤村知之(1年)  ・髪は長すぎず短すぎずちょうどいい塩梅! 相澤愛(1年)  ・つい30分前に入部の希望を出していまここにいるよ! 和泉ちひろ(2年) 「ここは最年長の先輩としてぜひ和泉センパイに部長になっていただきたく」 「私ここの3人と顔合わせたの、ついさっきなのにそんな大役無理! 芹沢くんがやればいいじゃない!」 「古傷の……肘が痛んで」 「芹沢くんそうだったの!? いま大丈夫!? 痛くない!?」 「アイちゃんの為なら、この腕の一本や二本、喜んで捧げるよ!」 「……芹沢がほんとに痛めてるのはアキレス腱だろう……。あと肘痛めてても別に部長になるのに支障ないだろ」 「芹沢くん、アキレス腱痛いの!? 大丈夫!?」 「アイちゃんの為なら、アキレス腱の一本や二本」 「……ねえ、この二人って付き合ってるの?」 「……そうです、ついこないだからですけど」 「……部長、藤村くんがやれば?」 「和泉センパイ、横から話入って申し訳ないんですけど、藤村が部長やるの、ちょっと微妙かなぁって思うんですよね。人望無いし」 「ひどい言いようだな」 「人望はともかくとして、この映画部は、映画部だと世を(たばか)った藤村の占いの部屋だし、あんまり藤村が表に出るのはどうかと」 「じゃぁ、芹沢くんがやればいいじゃない」 「俺、剣道部と兼部になるんですよね。正味の話、俺が部長になるのはあんまりいい話じゃないんすよ」 「相澤さん……アイちゃんって呼んでいいのかな? アイちゃんは何か事情あるの?」 「特に無いですけど……」 「じゃぁ消去法で決まりかな!」 「えええー!」 「そうだ藤村。お前の特技すっかり忘れてた。占えよ」 「世を謀ってる元締めが忘れててどうするんだよ……」  僕はトランプをシャッフルして、ひとりひとりの前に、一枚だけ配る。 「数がいちばん大きい人を部長にしよう」  せーの、で、裏返していたトランプを一斉にめくる。藤村、6。芹沢、2。和泉センパイ、9、アイちゃん、キング。 「そんなー!」 「決まりかなー」 「無難なところに落ち着いたね。さすが藤村くん」 「……アイちゃん、申し訳ないけどそういうことで」  学年の違う和泉センパイは当然知らない。  クラスの違うアイちゃんにも、まだ教えていない。  僕の占いは、トランプの手品から派生したものだということを。やろうと思えば、各自に配るトランプの出目をいくらでも操作できる。  芹沢が、カードをひらひらさせながら、目線を送ってくる。やったのか? と。  アイちゃんは渋々、部長欄に自分の名前を書いている。僕はトントン、と小さく机を鳴らす。やったに決まってんじゃん、と。  和泉センパイが、なに? というふうに、僕と芹沢を見ている。僕も芹沢も知らんぷりを決め込む。ちょっとどんくさいところのあるアイちゃんと違って、和泉センパイはそういうのに敏感なようだ。しばらくだんまりを決め込むのか、早めに正直に話すのか、それはともかく、アイちゃん部長に決定ということで、映画部の手続きが完全に整った。  出来上がった書類を見て、和泉センパイがこう宣言した。 「じゃぁ私は、2年生の悩み多き女子たちに、藤村くんの占いのことを宣伝しておくね! きっと大盛況になると思うな!」  この部活、映画はどこに行った。 (続く・スター特典あります)
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