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 しかし前方の二人から聴こえたのは、溜め息では無く歓喜の声だった。 「ああ、あった。あった!」 「本当ですね!すみません。手芸じゃなく、工作コーナーに間違って配置してしまっていたみたいで」 「いやあ、良かった。ネットで娘に検索してもらったはいいけど、実物を見て買いたかったものだから。うんうん、これならいい感じだわ」  老女が再びこちらの方に首を伸ばし、璃々江に向けて再度頭を下げる。  それに対し璃々江は、何でもないことのように、にっこりと笑みを返した。  書店でお目当てのスポ根漫画のコミックスを購入した後も、鉄平は先程の件がどうにも腑が落ちず、帰りの道すがら璃々江に質問を投げた。 「璃々江、お前さ。あれ、なんで分かったんだ?江戸縮緬なんて、興味ないだろ」  何でも気にかかることは、ストレートに聴くのが鉄平である。曖昧に聴いて話をはぐらかされることの無いよう、いつも歯に衣着せぬ物言いをする。  その質問に対し、当の璃々江はまるで気にも留めていなかったかのように天真爛漫な笑顔で答えた。 「ああ、ちょうど知ってたから、教えただけだよ」
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