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「だから何よそれ。超特別だって言ってるようなもんじゃない。未来が社長のことを尊敬してるっていうのは、感じてたよ。でもそれって道田くんはどう思ってたの?」
「何でここで創太の名前が出てくるの?」
未来は、まるで意味がわからないと言った表情で、綾香を見つめた。
「だってそんな風に思ってる男がいるって、彼氏からしたら嫌でしょう。」
「社長のことを最初に知ってたのは創太で、就職活動の時も、新しい会社だけど青島社長は凄い人だから、頑張れって言ってくれた。」
「面接から帰ってきた時も、創太の話していたことがわかる気がするって言ったら、直接会ったってだけで羨ましいって、創太の方が興奮してたのに。」
話をしているうちに、仕舞い込んでいた感情を思い出して、未来は黙り込んだ。
「未来、どうしたの?」
綾香が心配そうに、未来の顔を覗き込んだ。
「いつの頃からか、社長の話をすると創太が不機嫌になる気がして、そのうち話さなくなってた。
創太も仕事で社長と接点が出来たりして、全く話題にしないわけではなかったけど。」
綾香がため息をついた。
「私だって、未来が慕っているが分かるくらいなんだから、同じ業界にいて凄い人って分かっている男の話を、彼女が嬉しそうにしてたらさ、そりゃ嫉妬するでしょ。」
今更、どうすることも出来ないと分かっていながら、未来は自分の無神経さに落ち込んだ。
「未来は悪くないよ。本当に何も後ろめたいことがないから、そうやって素直にしてるだけ。」
「そういうとこ分かってくれて、受け止めてくれる男なら、未来も気持ちを押さえ込まずに、もっと素直でいられると思うんだけどな。」
「ありがとう。綾香が男なら良かった。私のこと分かってくれてる。」
すると未来のその言葉に、綾香は心底、嫌そうな顔をして言った。
「私が嫌だよ〜。未来といたら、嫉妬の嵐で私が持たないよう。」
「え〜、酷い。」
そう言うと二人は顔を見合わせて、笑った。
「ところで社長さまは、何だって?」
歩き出しながら、綾香が聞いた。
「来週の件を話しながら、食事しようって。でも大丈夫。明日になったから。」
「会いたい。」
「えっ?」
「会いたい。来てもらおうよ。私が会いたい。」
綾香はそう言うと、未来の手を取り、なぜか今来た道を戻るように歩き出した。
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