戯れる。

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「あのね、 先生。」 あたしは先生の肩に トンと頭を寄せて、 上目使いで先生を 見つめる。 「あたし、今まで 自分の感情圧し殺して、 されるがままだった でしょう? 好きなのもの好きって 言えないし、 嫌なものを嫌って 言えなかった。 だから、今この 状況が凄く幸せ。 好きなものを好きって 伝えられるの、 とっても嬉しいの。 いっぱいいっぱい 伝えたいの。 好き。 先生、大好き。」 もう、気持ちを 押し込めなくていい。 そう思ったら、 感情はどんどん 溢れだして来て、 気持ちを伝えずには いられない。 あたしはフフッと笑った。 それを見て、 先生は目を丸くして、 「っ・・・・、」 と、小さく動揺する。 ねえ、 先生、ドキドキして。 こっちを見て? 先生はフッと、 あたしを見下ろすと、 あたしの首筋に 顔を寄せて、 はあっ・・・・・、 と、熱く、ため息か 吐息かわからない 息をついた。 そして、 その形のよい唇を、 薄く開いて。 「――・・・、 厄介な、生徒だ。」 官能的なその声は、 あたしの耳にじんわりと 甘い余韻を与えて、 それだけで、胸が 苦しいほどざわめく。 もっと、あたしに 振り回されて、 あたしのこと、 いっぱい考えて? 「だって、 わざとだもん。」 あたしが挑発的に 笑って見せると、 先生は何も言わずに あたしの頭をぐしゃっと 撫でてきた。 自分がこんなに 積極的って 知らなかったな。 先生は、あたしの いろんな感情を 呼び覚ましてくれた。 ありがとう、 せーんせ?
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