戯れる。

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―――――――――― ――――――――――――― 「・・・・じろじろ 見ないでくれ。」 はい、 家庭教師の時間。 あたしは両手で 頬杖をついて、 プリントの丸付けを する先生をガン見 していた。 すると冒頭の言葉を 言われた。 「嫌です、 先生好きです。」 「そのとりあえず 『好きです』って ぶっ込むのもやめろ。」 先生は赤ペンでサラサラ 丸をつけながら、 はあ、とため息をつく。 そんなこと言ったって。 好きなものは 好きなんだもん。 改めて先生を見てみると、 先生って本当に綺麗な 顔をしている。 伏し目がちの目に、 筋のとおった鼻。 すべすべの肌に、 少し癖のある黒髪。 気だるそうなのに、 そこがまた官能的で、 目が、 吸い込まれそうなほど 魅力的だ。 赤ペンを握る指も綺麗。 「先生、 やっぱり好きです。」 あたしがトロンとした した瞳で見つめながら 言うと、先生はチラッと こっちに流し目を送った。 「その好き好き攻撃は いつまで続ける気だ?」 「んー、 先生があたしのこと 好きになるまで?」 「・・・・・・。」 あら、先生黙っちゃった。 あたしが先生の顔を ヒョイッと覗き込むと、 先生はペンを置いて、 頬杖をつく。 「ほんと、 最初に会ったときとは 大違いだな。 よくもそこまで好意を はっきり示せるように なったものだ。」 こういって、 呆れたように苦笑い しながら、あたしの 頬をサワサワと撫でる 楠先生。 あたしはそれに 対して猫のように 顔をすり寄せる。 先生に撫でられるの、 好き。 先生の指が少し くすぐったくて、 気持ちいいの。 ああ、 ほんとに、 気持ちがトロトロ しちゃう。 先生はそんなあたしを 見て、フッと笑った。 「・・・猫みたいだな。」 「もっといろいろ 撫でていいですよ?」 「・・・やめておく。」 先生はそういうと、 すっとあたしから 手を離した。 もうっ、 撫でればいいのに。
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