光の輪

白川 直央

　白川(しらかわ) 直央(なお)16歳。

　昔から、積極的に人に話しかけるタイプではなかったが、周りには必ず人がいた。いじめられたことも、いじめたことも、なかった。運動も、勉強も、それなりにできた。どちらかというと、器用な方だった。家族もいた。母も父も、優しいひとだった。何かを強制させられたことはない。自由にのびのびと、育てられた。特別お金持ちというわけではないが、お金によって何かを悩んだことは、ない。容姿や恋愛もそう。あちらから言い寄られることが大抵で、困ったことは、正直ない。

　そう――これまでの人生、特別何か欠点を抱えたことは、なく、絶望するような悲劇が自分に降り注いだ経験も、ない。

　何もかもに恵まれていて、ちゃんと幸せなはずなのに――けれど、何か、ずれている。何かが、違う。最近、そんなことを、考えることが増えた。