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僕は自ら命を絶つことを考えていた。平たく言うと自殺するってことなんだけど、そう言ってしまうとなにか生々しくて怖くなってくるので、自ら命を絶つと気取って言わせてくれ。
自ら命を絶つ。それだけだと格好がつかない気がしたので、じゃあ遺書を書こうと思い立った。
ところで、遺書なんてものを書くならボールペンよりも万年筆だろうと思って一本買った。
それでいざ遺書を書き始めようとしたら、どう書くのかなんてわかるはずなく、ちょっとネットで調べてみたら、そこには暗くて重い文字ばかりで頭が痛くなってしまった。
僕は万年筆を机の上に置いて天井を仰ぎ見た。
「自ら命を絶つのも楽じゃないね」
「そうだね」
「しかもさ、自ら命を絶つ前に遺書なんてものを苦労して書くなんてさ、なんだかわけのわからない話だよね」
「ほっといてくれ――えっ!?」
さっきから、僕はドラマ仕立ての独り言を言っているのかと思っていたら――違った。
振り向くと、白い服を着た白髪白髭の老人が僕の部屋の真ん中に立っていた。
「だっ、だっ、だっ、だれなんだっ!?」
僕はリズミカルに驚きの声を上げる。自ら命を絶つなんてとんでもないことをずっと考え続けていたから、いよいよ、僕は頭がピー(表現規制)になったのかとも思った。
「神さまじゃよ」
「あ、そう。ふうん」
幻だ。僕は部屋の照明を消そうと椅子から立ち上がった。
「今のは冗談」
幻覚が冗談を?
僕は首を左右に振った。
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