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「私は守護天使だよ。おまえさんの守護天使」
「ふうん」
僕は部屋の照明のヒモに手を伸ばした。
「一体何が気に入らないのだね?」
「いや、幻覚を消そうと……」
「だから、私はお前さんの守護天使。幻覚とか冗談なんかでは全然ないぞ」
守護天使。これはそれは幻覚でも冗談でもなく……本物のようだ。一体なんで突然そんなものが僕の目の前に姿を現したのだろうか。
白髪白髭の老人は――僕の守護天使だそうだが――言った。
「そりゃね。私の護るべき対象であるお前さんが、自ら命を絶とうなんて不吉なことばかり考えているから、そろそろ一言言おうかなと出てきたんだよ」
「ほっほう。それじゃあ、自ら命を絶つなんて僕のとんでもない行動を止めに出てきたの?」
「残念ながら……」
僕の守護天使は目を伏せて言った。
「守護天使には、守るべき対象の行動を操作する力はないんだよ。不運からその身を守ってあげることはできるんだけどね」
「例えばどういうふうに?」
「ボールが頭めがけて飛んでくるぞと気づかせてあげられるとか、こっちの道は事故に遭いそうだからやめとこうと不吉に思わせるとかね」
「僕の心に感づかせるだけかよ。結局、僕が自分でどうにかしなくちゃいけないじゃないか!」
そりゃそうだろう、という顔で守護天使はうなづいた。
「君の運命は私のものじゃないからね。君が決めるものだ」
そりゃそうだね、と今度は僕がうなづいた。
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