僕の守護天使

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「ほっほう? 机の上にあるこの紙切れが、僕は一体どうして命を絶ったのかとみんなに伝える遺書だね?」  守護天使は、机の上に置かれた僕が書きかけの遺書を眺めた。 「ちょっと! 何を勝手に見てくれてんの?」 「何を今さら、だよ。私はきみの守護天使。きみの心の一部でもある。心が現実を見て何が悪い?」 「クソ真面目に言ってさ」 「守護天使だからそうなる。カッコよく言えば、リアリスト」  天使(だよね?)が一体どこでそんな小賢しい言葉を覚えるんだか。 「なんだい、こりゃ? ほとんど書けてないじゃないか」 「どう書くか考えていたんだよ」 「きみ、クラスメート数人からいじめられているんだろ? 毎日肘や足の爪先で突かれるような嫌がらせを受けて、その都度惨めな思いさせられて、でも他のクラスメートたちは関係ないって顔をするばかりで、学校には居場所が全然ない。それは家にもない。いいや、どこにもないんだ」 「さすが僕の守護天使。よく僕のことを知っている。というか、それでも護ってくれないって……」 「そこは私も苛立ちを抱えているのだよ。いじめっ子たちをやっける力は守護天使にはないのでなあ。で、遺書の書き方だけど、彼らへの恨みを書けばいいんじゃないのかね?」 「そう? って、あのさあ」  僕の不穏な考えを止めるのではなく、こうすれば自ら命を絶つことにカッコがつくよって的確なアドバイスを送られたみたいで、僕は呆れた。 「僕の何かを止めるのではなくて、茶化しに出てきたのなら消えてくれないかなあ」 「話を戻そう。私の護るべき対象であるきみが、自ら命を絶とうなんて考えているから、一言言いに出てきたんだ。一言言わせてくれ」 「どうぞ」 「自分から命を絶つなんて、死ぬほど痛い目に遭うぞ」
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