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「っ!? ほっといてくれ。遺書の書き方もだいたい決めてある。さっきあなたが言ったみたいに、恨みだ。わたしからあなたへ――死者からのメッセージとしてやる! あいつはとんでもないことをやってくれた、俺たちはとんでもないことをしてしまったんだと後悔するがいい!」
「ふんふん」
守護天使は、僕の遺書を書く手の動きを鼻息を鳴らして眺めてきた。
「やめろとは言えないんだけど、やめとこうと思わない?」
「ホントはそんなのしたくないよ。でも、もう、この世には、僕の居場所はないんだ」
「自ら命を絶って、それで……、きみはどうなるのかね?」
「どうなるのかって……やっと楽になれるよ」
「うはははっ」
僕の一言に突然守護天使は笑い出した。
「何が、おかしいんだっ!?」
「いや、ね。きみは高いところから飛び降りるぞと考えているようだけど、楽になる前に、死ぬほど痛い目に遭うってところがやっぱりおかしくてね、つい笑ってしまった」
「いろいろ考えたんだけど、他にそれより楽に死ねる方法が思いつかなくて」
「それは当たり前だよ。寿命で自然死するのならともかく、外からの力を使って死ぬということは、楽に死ねるものかい。死ぬほどの痛みや恐怖が一緒についてくるんだから」
「もう、ほっといてくれ」
「どれだけ長く生きても……落ちるだけで死ぬ、か。命とはもろいものだよな」
「それだけ安物なんだろう、命ってものは。だから、今日も世界中で、たくさんの人が事故や犯罪に巻き込まれたりで死んでいるんだ」
「安物? そんなバカな」
「バカとは……」
「いいかね。これからこの世が何十億年先へ続こうが、輪廻転生生まれ変わりというものがあったとしても、死んでしまったきみとまったく同じ人間は、二度と現れてはこないんだぞ」
僕の守護天使は、深みのある言葉を並べ始めた。
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