僕の守護天使

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「あ? あれ?」  あなたは――彼は、驚いた目をしてスマホの画面から顔を上げた。ずっとスマホの画面を見続けて、顔を上げると視界がぼやけてしまったのか、目をパチパチさせた。  しばらくそうしてやっと落ち着いたのか、彼は私が貸したスマホの画面と私の顔を交互に何度も見た。  彼の手の中には私のスマホがあった。  彼はその画面に映し出される文字を――私が書いた物語を熱心に読んでくれた。  でも、その物語は途中で終わっていたから、彼は驚いたのだ。  いいや、そこで終わってなんかいない。それはまだ書きかけの物語だった。その続きを書くには彼の力が必要であった。 「この物語に出てくる“僕”とは、あなたのことよ。あなた、いじめられているのよね。それはクラスのみんなが知っている。どうにかしなくちゃいけないとも思っている。でも、実際にいじめをやめさせようって行動を起こしてしまったら、いじめの標的が自分になるかもしれない。そんなの怖い、嫌だ、とんでもない。だから、誰も何も言わない。見なかったことにしている」  私の言葉を、彼は真っ直ぐな目で聞いてくれた。 「このお話の中に出てくる守護天使なんてものは、どこにもいないの。誰にも見えやしない。あなたや私たちの目に見えなくちゃいけないものは、いじめっ子たちをも含めた“わたし”から“あなたへ”の“真ん中”にあるものなのよ」  私は、うまく煮え切らない考えをなんとか言葉にして口から出していた。 「わけのわからないことを言っているって思うよね? 私も自分自身、一体何を言っているのかちょっとまだはっきりしない――けれどね、それでも、その“真ん中”にあるものとは、一体何かと私は考えたの」  私は両手を打ち合わせて鳴らした。パンパンと手を叩いた。
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