僕の彼女はだらしない

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 僕の彼女はいつも開けっ放しの人間だ。  部屋の扉も窓も。  ほんの数センチ、少しだけ。初めは空気の換気かと思って何も言わなかった。  けれどそれは毎日で、僕だけがいてもおかまいなしに開けっ放しだ。  さすがに玄関のカギは閉めてはいくけれど、防犯上、人が入ってきそうにない場所はいつも少しだけ開いている。  彼女のこだわりなのかなと思うし、変に気を使って正してしまうと争いの種になってしまう。  いつものように彼女の帰りを待っていた。  話し声が聞こえて、友人を連れてきたことがわかる。  なんだよ。わかっていたらそれなりの準備をしたのに。 「お願い。こんなところだけど、入って入って」  こんなところとはひどい言い方だ。  住めば都というではないか。  確かに彼女は少しだらしない。  食べた食器はすぐには洗わないし、トイレの扉だって開けたままだ。  洗濯物も干しっぱなしで、そこから毎日着替えている。  付録つき目的で買った雑誌はあちこちに散らばっている。 「ただいま」のひと言もなく、彼女は僕がつけたテレビを無言で消した。  後から入ってきた気が強そうな彼女の友人は、床に座る僕を睨みつけて、 「おい! いい加減出ていけっ! このニート野郎!」  問答無用で顔を殴りつけられた。  僕はびっくりしたし、彼女も驚いている。  確かに僕は引きこもりだし、働いていない。  彼女は何も言わなかったから、それでいいのだと思っていた。  僕は彼女のやさしさに甘えていたのかもしれない。
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