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会社の愚痴をぼやく彼女に、
「大丈夫、君は一人じゃないよ。僕がいつもついているから元気を出して」
などと語り掛けるが、疲れているのか返事はいつもなかった。
それでも僕はしょうがないと思って怒らなかったのに。
「聞こえてるんだろ? 聞こえてなくても、暴力はふるえるんだからな。聞き分けないのならそれなりにもう一度痛い目見るか?」
彼女の友人の気迫に僕は命の危機を感じ、慌てて窓の隙間から裸足で彼女の部屋を飛び出した。
背後から聞こえてくる彼女たちの会話は、
「あーすっきりした。臭うから隙間開けてたのに、全然空気流れないんだもん」
「その前によく長いこと一緒に住んでたな」
「顔だけはよかったんだよ。でもだんだん調子に乗って居座るし、電気も点けっぱなしにするから、さすがにね」
「安いからって事故物件なんかに住むからだろ」
「だってひとりは寂しかったんだもん。前のカレシは散々だったし、だったら生きてない方がまだマシかなって」
「……それより、アンタの部屋汚すぎ。どこもかしこも開けっ放しじゃない」
「あれ―おかしいな。最近クローゼットは使ってないから、ちゃんと閉めたと思ったのに?」
そういえばクローゼットの隙間から覗いていた、あいつは誰なんだろう?
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