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本田7
気を失っていた時間は一分にも満たなかった。
俺はハッとして助手席に首を振る。彼は座っている。エアバッグに顔を埋めながらも。
「マツダ、大丈夫か」
まだ頭はくらくらしているが、意識はしっかりとしていた。マツダの肩に手をかける。
「大丈夫」
マツダが顔を上げる。
「本田さんは?」
掠れてはいたが、しっかりした声で聞き返され、俺は心底安堵した。
車のスピーカーからは、自動音声が流れている。保険会社に勝手に通報してくれている。
「大丈夫。外に出よう」
外に出ると、散々な光景が広がっていた。
対向車線から逸れて突進してきた赤い国産高級車は、さっきまで俺が走っていた道に到達していた。半壊している。
後ろから頭突きしてきた車は、ベンツに並ぶ頑丈な輸入車だった。ボンネットが凹んでいる程度。
「国産車だったら、俺たち死んでたな」
俺が呟くと、隣に立つマツダが相槌を打った。無駄口は叩いてこない。
お互い疲れていた。
とりあえず俺は、マツダの手を握った。彼も握り返してきた。
ほどなくして、赤い国産車と輸入車から運転手が外に出てきた。
四方八方から野次馬が集まってきて、その喧噪を破るように、背後からパトカーと救急車のサイレンが聞こえてくる。
俺のベンツはというと、ボンネットがガードレールに突っ込んでいて、フロントガラスはひび割れている。
その先には市場だ。大きな段ボールに、溢れそうに積まれているリンゴが目に鮮やかに映った。
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