千願あれど

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「あの人が帰ってきて  くれてたら、ここで人生を  過ごしていたでしょうけれど」 老婆の後の人生が気になる アツシマミムロと狛犬兄弟は 老婆の語りに耳を傾けた。 「子供二人を連れて実家へ戻って、  家業の燃料屋を手伝ううちに  長男が跡を継いで、嫁がきて  娘を嫁にやって、孫がどんどん  増えて・・・気づいたら・・・  こんな歳になってたわ、ふふ」 「孫だけでも六人、  曾孫だけでも・・・」 言いながら青年が 指を折っても数え終わらぬ様子に アツシマミムロは嬉しくなった。 「こんな幸せを戴いた神様でしょ?  死ぬ前に、”御礼“には、どうしても  どうしてもきておきたかった」 老婆から”御礼“という言葉が出て、 アツシマミムロは戸惑った。    
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