千願あれど

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「いろんなお願いを・・・  ここではさせて戴いた・・・  お嫁にきたときには  『可愛がられますように』  子供を授かったときには  『無事に生まれますように』  それこそ、神様がウンザリ  なさってしまうくらい・・・、  欲張り過ぎたのね・・・。  戦地へ行ったあの人の無事までは  厚かましすぎだった。  厚かましい私が悪いのに  叶わないときには神様を  恨んでしまったり・・・。  こうして、あの人の命が  あなた達に繋げて下さる  ことだけでも、偉大な神の  恩恵だと気がついてから  死ぬまでに一度は、ここへ  御詫びと、あなた達を  授けてくださったことの感謝を  申し上げにきたいと  思い続けてきたのよ」 老婆は娘に手をひかれ、 ソロリソロリと社へ向かった。 正面に見る老婆のなんと 神々しいことか・・・ 深々下げた老婆の頭よりも深く ・・・深く頭を下げるは アツシマミムロ、 この弱き神の心の霧が 僅かに晴れ間を見せていた。
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