魔道書修理屋の事情

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 ……はあ。長話になっちまったね。ババアの愚痴に付き合ってくれてありがとうよ。  その間に、あんたの魔道書の修理も終わったさ。  できるだけ思い出を壊したくはないからね。差し替えの素材は、ほとんど同じものを使ったよ。  ひとつだけ、留め具の石を替えさせてもらった。  スターサファイア。  あんたの大切な人の瞳と同じ色を混ぜる事で、加護をつける。まあ、迷信じみた、安心材料みたいなものだけどね。  お代が材料に見合わないって? まだまだ若造のくせに、そんな事気にしなくて良いんだよ。  そうだねえ、その代わり、今後もご贔屓にしてもらえたら、あたしとしてはお得意様が増えて万々歳だ。  あと、そうだね。あんたの子供が大きくなって、魔道士を目指すって言い出したら、うちに連れてきておくれ。とっておきの一冊をプレゼントするよ。  魔道士が死なない手伝いをする。  それが、あたしがこの仕事を始めた理由であるし、続けてゆく矜持であるから、さ。
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