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話し終えると、いつしかセレネの目から、大粒の涙が零れ出ていた。月光は当たり、涙は水晶の粒に姿を変え、床に落ちていった。これも月の魔力だ。
「セレネ様・・・」
「うふふ・・・。ルナ、ごめんなさいね。私のこんな昔話をしてしまって・・・。でもね、ルナ、貴方はこんな風になってしまってはダメですよ。私は貴方に、人間としての幸せを全うして欲しいですから」
セレネの言葉に胸打たれ、ルナはしばし黙った。床に散らばった水晶に月明かりが反射し、宝石の国にでもいるかのようだった。
でも、誰かをそんなに愛せれば、それはそれで一つ、究極の幸福なのだとルナは思う。
「セレネ様、貴女様は言いましたね、永遠などないと」
「ええ。ないと思いますわ」
「でも、貴女様は今も、エンデュミオンを愛してらっしゃる、それこそが永遠であり、真理なのだと僕は思います」
「まぁ、ルナ・・・」
「僕はこれから、どうなるか分からないけれど、エンデュミオンは幸せだったと思います」
目の前にいる少年の瞳が、あの日、眠りに就く前の愛した男の瞳に重なる。どちらも綺麗で、嘘偽りない目であった。
「ありがとう」
ポロポロ泣きながら、セレネはルナにお礼を言った。
神は長く生き過ぎる。それ故に失敗も犯す、だが、意外にもその傷を癒すのは、万能でない人であったりもする。
今宵の月のように、優しい気持ちに浸り、セレネは足元にどんどん水晶玉を増やしていった。
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