1. きっかけ

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 教室にいるのは加藤と僕だけ。部活として決められた曜日ではなく、また文化祭というイベントも終わったせいか、他に誰もいない。加藤は好きに絵を描いて、僕も夕日の絵を見ると適当に暇を潰して、飽きると帰る。そんな中で、初めて加藤以外の生徒とこの教室で出会ったのだけれど。 「あれ、お前の目当ての絵を描いた子だよ。二年F組の木谷紗代」 「きや、さよ?」  初めて聞く名前を間違えないように、聞き返した。A組の自分からは、F組の生徒はひどく遠い。初めて知るのも仕方なかった。 「あの子が、描いているのか」  先ほどの慌てた表情を思い出す。自然と目線は袖口へと降りていって、そして疑問を発していた。 「なんで、血と間違えたんだろう」  暇つぶしの一環として、気まぐれに絵筆を握った。高校に入ってからの選択授業は音楽。この一年半ですっかり絵に対する知識や常識は忘れ去り、だから加藤から与えられた画用紙にいきなり絵筆をのせてみた。その色が青だったにもかかわらず、あの反応。 「木谷のほかの作品、見てみるか?」
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