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「いつだったかな。ここを占いか何かと勘違いしてる男が来たことがあった」
「えー、そんなの珍しくないだろ?」
「それがね、」
黒樹が、妖しく目を細めて笑う。
「その男は『運命の人』を捜してたんだよ」
ニヤリと笑った黒樹の言葉を聞いて、楓は顔を赤くしてむくれた。
「俺じゃねーか、それ……」
「まったく、『運命の人』じゃなくて仕事を探したら?」
「あーもー!……ホント、やぶ蛇だった!」
悔しげにコーヒーを啜る楓を見て、黒樹はフッと小さく笑った。
「で、教えてくれないわけね、ここで店を開いた理由」
「しつこいよ、楓は」
扉の鈴が、りんと鳴る。客が来た。
楓が椅子をあけて、黒樹は目を細めて笑った。
「いらっしゃい。捜し物?」
ここでは、魔術を使って捜し物の情報提供をしている。
ある日、この街にやってきて、ここに店を開いた――――『運命の人』が見つかる気がして。
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