つなぐひと

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私にはわからない。 他の誰も持たない力を自分が持っていると思えることは、有頂天にさせてくれる。 けれども、これがそうだと、私は自身を信じることがまだできない。 「これからがマラキアにしかできない仕事になる。修復には、自分が一番集中できる動作を使うんだよ。私は、歌や楽器を使うけれど、マラキアが大好きなのは何だろうね?」 「……針仕事……。一番得意とはいえないんだけど。カネレが針を運んでるのを見たり、音を聴いたりするのが好きなの」 「そう。針を使って綻びを縫い合わせて閉じるところを頭に描くことはできる?」 私は、しばらく目を閉じた。 さっき術譜を書き取った時の高揚感は、まだ私の身体の中に残っていた。 はじめから辿ってみる。 微かな震え、違和感。 滑らかなのに引っ張られた所。 今ならば。 「カネレ、竪琴を……」 私の様子を見たカネレはすぐに察して、竪琴を手渡してくれた。
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