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隆磨さんの背後から、野ネズミのような柚子穂がしゃしゃりでてきたとき、私はようやくわれにかえった。それでもしばらくは茫洋としたまま、目だけは隆磨さんを追っていた。
「ななおちゃん、ありがとうね!」
柚子穂が隆磨さんを私のいるテーブルに連れてきた。ああ、超絶 & 空前絶後の美男子をまぢかで見た私の心臓はマジで破裂しそうになった。
「……あ、あ、ああ……柚子ちゃん」
私はうつむいたまま、そう呟いた。
「萩尾さん、はじめまして。僕は柚子穂さんとお付き合いをさせていただいている如月隆磨です。よろしくお願いいたします」
彼はおもむろに自分の名刺を私に差し出した。
隆磨さんが私の顔を覗き込む。ああ、おやめになって……私……私。
「は、は、はは、は、はひ、は……はじめまして。私、萩尾……那尚と申します……」
なんてこと、こんなにも美しい殿方と間近でお話をするなんて……純な乙女にはまさに拷問以外のなにものでもありませんわ……。
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