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クマ吉公園での私の読書は小学校以降もずっと続いていた。小学校の頃はもっぱら少女マンガを読み、中学校のときはハリー・ポッターにドはまりした。他にも少女向けのライトノベルやオカルト系の本を読んでいた(わたくし……呪いの研究をしていましたの)。
そして高校になってから、さまざまな作家とであった。私のお気に入りは、瀬戸内寂聴、三島由紀夫、山崎豊子、宮部みゆき、小野不由美、そしてなんといってもかの中井英夫大先生だった。
『虚無への供物』を青春のバイブルとしながら、私は中井先生の小説を読みふけった。思い返せば、多感で繊細な少女だった(……心は)。
『ななおちゃん、ちょっと会ってほしいひとがいるんだけど……』
電話口の柚子穂が殊勝に懇願する。
『なに、柚子ちゃん? 会ってほしいひと?』
『午後3時に銀座のコロンゾンに来れないかな?』
『えっ、うん、いいよ、ぜんぜん行けるよ。っていうか、今日は私、コロンゾンの日だから』
コロンゾンは銀座の一等地にあるビルの地下二階にあるカフェ・バーだ。オーナーの趣味なのか店内には背の高い書架が並んでいる。古典文学から人文書、詩集や比較的新しめのエンタメ小説などさまざまな本がぎっしりと詰まっている。
店を訪れたお客さんは、シックなソファに陣取って自由に本を読んでいいことになっている。私が注目したのは中井英夫先生の絶版本やサイン入りの稀少本などだった。
もともとは私がネットで発見して、柚子穂に教えてやったお店だ。だがお調子者の柚子穂はひとりで結構足繁くコロンゾンに通っているらしい(そういえば柚子穂の職場は有楽町だもんね)。
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