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 忘れもしない、私は午後2時49分まで中井ワールドに耽溺(たんでき)し、宇宙空間に浮遊していた。そしていま何時かしら、とふとコロンゾンの柱時計に目を移した刹那、あの方が店に入ってきたのだ。  サラサラとした光沢ある頭髪、凛々しい眉毛、無敵の双眸(そうぼう)はらんらんと輝き、その下に、ああ、あのセクシーな唇が……。  そう、それが私が始めて謁見した隆磨さんの凛々しき雄姿だった。ギリシャ彫像然としたその肢体、それはまさに歩く芸術(アート)であり、私だけの天使(ダーリン)の降臨だった。 「えっ!」  私は言葉を忘れ、ただただ隆磨さんを見つめていた。そして私の脳内にノートルダムの鐘の音が響き渡り、続いて法隆寺の重厚な鐘が鳴り響いた(……それほどの衝撃だったってわけ)。 「ななおちゃん!」
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