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「なんだか急なことでごめんなさい。ただ柚子穂さんがあまりに楽しそうにあなたのことを話すものだから、僕も思わず、とっても会いたくなっちゃって」
隆磨さんの言葉に私の心臓が飛び出しそうになる。そ、そんな……私に会いたくて堪らないだなんて……いやだ……恥ずかしい……そんな唐突に告白をされた私はどうすればいいの?
「……そうなんですね。でも如月さんはどうして私なんかにお会いしたかったのかしら?」
頬をリンゴのように染めた私は、少し甘えながら彼に問いかけてみた。
「うん、柚子穂さんが云うにはね、あなたに会っていると、とっても元気になるっていうんだ。なんていうのかな……きっと彼女、あなたのことが大好きなんだと思うんだ。だから、あなたに会っているだけで嫌なことが全部忘れられるんだって。それって凄いことだよね?」
「は、はあ……」
私はなんだかとっても不思議な気分だった。確かに柚子穂は私の家来であり、格下女子だから、いつも可愛がってあげてはいる。でも、だからといって、そんなに私のことを好いているとは思えない。いや、むしろ嫉妬心から私のことを恨み、嫌っているはずだ。
「……はあ、そうなのですね」
「はい。だから会えて本当に良かったです」
隆磨さんの天上の讃美歌のような声が私の鼓膜をくすぐる。そして彼のとろけるような熱視線が私を包み込み、私を有頂天にした。
そしてもちろん、私は恋に落ちた。
それは私の人生始まって以来の緊急事態だった。そう、そのとき究極の愛の大波が、けな気な私のピュアハートをのみ込んでしまったのだ。
そして愛の大波は遥か彼方の海洋まで私を連れ去っていってしまったのだった(愛の漂流の始まりよ……)。
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