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「あはははは、本当に萩尾くんといると柚子穂さんは楽しそうだなあ」
あるとき隆磨さんがそう云った。
「えへへへへ、だって私、ななおちゃんのことが大好きなんだもん」
「あははは、やめてよ、柚子ちゃん……」
はにかむ私のはらわたはいつも煮えくり返っていた。本当に邪魔な女! あんたさえ消えてくれたら、本っ当に最高の一日になるっていうのに!
あるとき、柚子穂がお手洗いに行っているとき、隆磨さんが私に教えてくれた。
「柚子穂さんね、なにかというとすぐ萩尾くんを呼ぼうよ、って云うんですよ。最初のうちはちょっと驚いたんだ。だって僕と柚子穂さんは、いま正式にお付き合いしているわけじゃないですか? 本当はふたりだけで会いたくないのかな? なんていぶかしんだりしちゃってね。あはははは、でもなんだか分かるような気がするなー」
「えっ?」
「いえね、彼女、萩尾くんといるととても饒舌になるんですよ。きっと友人として、人間として、とても萩尾くんのことを信頼しているんだと思うんです。だから、きっと柚子穂さんにとって萩尾くんは家族以上の存在なんだろうなって」
「そんなあ、確かに私と柚子ちゃんは仲良しだけど……」
ふん、あの柚子穂のことだから、きっと隆磨さんのことを私に自慢したいだけなんでしょう! まったくもってムカつくカス女ね!
「ごめんねー、待った?」
柚子穂がニコニコしながら厠から出てきた。クッソ、この狸娘、またまた私たちの恋路を邪魔しやがって!
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