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「ごめん、待った?」
私たちがいる六本木のカフェ「ラピス・ラズリ & ジャスパー」に隆磨さんが颯爽と登場した。それにしても凛々しいお方。全身から醸し出す上品で洗練された無謬のオーラ、ああ、このお方こそ、私がお慕いしてやまない完全無欠の王子さまだ。
「ううん、待ってないよ」
柚子穂が下品な声で応答する。恨めしや、恥知らずの雌猫め。
「やあ、萩尾くん、久しぶりに君に会えて嬉しいよ」
彼が私に向かって輝く白い歯を見せる。どうか、ご遠慮なさらずに「ななお」と呼び捨てにして下さい。
「私の方こそ、隆磨さんに会えて嬉しいですわ」
きっと私の頬は紅潮していたにちがいない。ああ、隆磨さん、とてもじゃありませんが、私にあなたを直視する勇気はありません(ガン見したいけど……)。
「柚子穂、萩尾くんにあのことお願いした?」
はあ、「柚子穂」ですって……。私のことは苗字でお呼びになるくせに。
「ううん、まだなの。どうせなら、隆磨くんが来てから一緒にお願いしようかなと思って」
「ああ、そうなんだ。ははははは、了解だよ」
隆磨さんのお馬鹿さん。なんでこんな下衆女と示し合わせたりしているわけ? 私の五臓六腑に怒りの激流が駆け巡る。
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