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「えっと、ななおちゃんに改めてお願いしたいことがあるの。えーっと、ななおちゃんもご存じのようにわたくしこと咲田柚子穂と如月隆磨くんは結婚します。そして私たちの式の日取りが11月22日に決まりました。えへへへへ、私たちふたり、幸せになるために結婚式を挙げます」
柚子穂が満面の笑みを湛えながら私にそう云った。くっそ、ついに式の日取りを決めちまいやがったか……落胆。
「あら、ついにふたりの門出の日が決まったのね!」
えづく胸を押さえながら私は無理やり笑顔をつくった。私の心の中では無尽蔵の涙がナイアガラ級の勢いで急速落下していた。
「うん、そうなんだ」とはにかむ王子。
「えへへ、うん、ついにね」とほざくドス黒い霧のような柚子穂。
ふたりの幸せそうな笑顔、私は今世紀最大級の怒りと悲しみに崩壊寸前だった。
「……でさ、私たちの式で、ぜひななおちゃんに友人代表のスピーチをお願いしたいの」
「へっ!」
柚子穂が爬虫類のようなまなざしを私に向ける。そして私は予定調和的に驚くフリをした。
「わ、わたしが友人代表? スピーチ?」
「うん。だってななおちゃんは私の無二の親友でしょう? 私にはななおちゃん以外に相応しいひとがいないんだもん。……だめかしら?」
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