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「いいえ……決してだめというわけではないけれど……」
私の困惑の表情を見た隆磨さんが
「萩尾くん、僕の方からもお願いします」と一礼した。
複雑……私は愛する隆磨さんを今日始めてまざまざと眺めた。結果、絶句。なんて魅惑的な方なの……。まるでミケランジェロの彫刻、バッカス・デュオニュソス!
「萩尾くんに引き受けてもらえたら本当に嬉しいな。なによりも君に柚子穂の幸せをお祝いしてほしいんだ」
私は隆磨さんから視線を外してうつむいた。
「ななおちゃん、お願い。小っちゃなころから、ずっとななおちゃんと一緒だったし、世界で一番私のことを理解してくれているのは、隆磨くんを除くとほかにはななおちゃんしかいないんだよ」
「……うん……そうね」
私はついつい首肯してしまった。そして途端に後悔した。
「やったーありがとう、ななおちゃん」
柚子穂は有頂天になっていた。はあー、それにしてもなんたる展開。もちろん、友達の少ない柚子穂のことだから、私に友人代表スピーチをお願いしてくるだろう、ってことは予測していたのだけれど……。
私は大喜びしてはしゃぐ柚子穂を邪眼で呪うと「うん、頑張る」と返答した(けなげ)。
「ありがとう、萩尾君」
隆磨さんの熱視線が私の心の臓を貫く。酩酊しつつも私はただ静かに笑みを返すことしかできなかった。
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