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一度は出て行った身だもの。
もういらないと言われても、おかしくない。
「保との結婚、許そうと思う。」
「えっ?」
顔を上げると、お父様は穏やかな顔をしていた。
「保に言われた。小花が屋敷を出るなら、自分も屋敷を出ると。仕事も一から探すと。」
母と一緒に暮らした家の前で、私に微笑んでくれた保さんを思い出す。
「そこまで思い合っているとは、知らなかった。許してくれ。」
「許すだなんてそんな……」
頬に涙が零れた。
「ありがとうございます、ありがとうございます。」
私は何度も、お父様に頭を下げた。
書斎を出た私は、真っすぐに自分の部屋に向かった。
そこに保さんがいるって、知っているからだ。
こんなにも、逸る気持ちで、保さんを追いかけるのは、初めてだ。
「保さん。」
部屋のドアを開けると、保さんが窓辺に立っていた。
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