第1話 妾にならないか

10/21
前へ
/107ページ
次へ
そして馬車は、私の家の前に停まった。 小沢さんは、先に馬車を降りて、降りる私の手を取ってくれた。 こんな扱い、初めて。 「ご免下さい。」 戸を開けると、近所のおばさんが、母の側にいた。 「小花ちゃん、どこに行ってたんだい!お母さん、大変だったんだよ。」 「えっ!」 急いで家の中に入って、母の顔を見ると、真っ青になっている。 「お母さん!お母さん!」 すると小沢さんがやってきて、お母さんを抱き起した。 「直ぐに病院へ連れて行こう。」 「はい!」 小沢さんは母と私を乗せると、一目散に走り去った。 「お母さん……死んだらダメだよ。」 そういう私に、小沢さんは隣にいてくれた。 「大丈夫だよ。僕が信頼している医者に見せるからね。」 「お願いします。」 私はいつの間にか、小沢さんにすがっていた。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

204人が本棚に入れています
本棚に追加