第1話 妾にならないか

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そう言って私は、家を出た。 時代は、明治から大正に移っていて、新しい時代だと皆、浮足立っていた。 私は中学を卒業してからは、母の看病に明け暮れていて、気がつけば18の歳になっていた。 同級生は、どんどんお嫁に行っているけれど、私にはそういう話は来ていない。 父は、母の事を公にしたくないから、私の嫁ぎ先も、公に探さないらしい。 でもそれでいいんだ。 母と二人きり、穏やかに暮らしていくのが、私の望みなのだから。 「はい、いつもの薬ね。」 「ありがとう、おじさん。」 薬屋さんの店主とは、仲が良かった。 「ところで、小花ちゃんはいくつになった。」 「18です。」 「そっか。そろそろと嫁ぎ先を決める頃合いだね。」 「はぁ。」 薬屋には、武坊という私よりも2歳年上の跡継ぎがいた。 「どうだい、ウチに来るかい?」 「えっ!?」 「冗談だよ。お前さんの父親は、貴族だからね。ウチなんざ、畏れ多くて貰えないよ。」 そうなのだ。
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