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父は、実は貴族で、この辺では偉い人で通っている。
だからこそ、母の事を隠したいのだ。
「だからってなぁ。いつまでも、嫁に出さない訳にはいかないからな。」
薬屋の主人は、私の事を親身になって、気遣ってくれていた。
でも時々思う。
そんなに、嫁に行く事が大事なのかって。
「じゃあ、私行くね。」
「ああ。また待ってるよ。」
私は薬屋を出ると、また大通りに出た。
たぶん、嫁入りの話をされたせいか、ボーっとしていたのかもしれない。
自分に危機が迫っているのも、気が付かなかった。
「危ない!」
その声に振り返った時には、大きな馬が私の上に迫ってきていた。
咄嗟に目を瞑って、その場にしゃがんだ。
轢かれる!
もしかして、私、死ぬかも!
周りがガヤガヤしてきた。
「おい、大丈夫か?」
誰かに肩を叩かれ、私の身体はビクついた。
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