第1話 妾にならないか

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第1話 妾にならないか

人生は、いつ何時、何が起こるか分からない。 それが、いい方向に向くかも、悪い方向に向くかも。 それでも、好いたお方と一緒にいられる事は、良かったのかもしれない。 私には、病気の母がいた。 「はい、お母さん。お薬。」 「悪いね、いつも。」 咳が止まらない母は、薬が手放せなかった。 父は、本妻の家にいる。 いわゆる、母は妾だった。 それでも、街の外れの家で、母と二人きりで暮らせるのは、幸せだった。 父は時々、顔を出すけれど、母をいい病院に入れようとはしてくれない。 素性がバレると、もう会えなくなるからと言って。 「あっ、お薬無くなってきたね。買ってくるね。」 私は立ち上がると、棚の中にあるお金を出した。 「小花。お金はある?」 「あるよ。無くなったら、お父さんに言えばいいし。」 父は、母を病院に入れない代わりに、お金だけはくれる。 だから、お金には困らない。 「……小花。ごめんよ、お母さんが病気で。」 「いいよ。別に困らないし。」
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